シュモクザメは人を襲わないと書いてあった

飴を噛んで食べる人のうち、一生の間に一度も周りから「飴、噛んじゃうんだね」と言われずに過ごしたことのある人はどれくらいいるのだろうか。たいていの人は中年くらいになるともはやうんざりしているのではないかと思う。飴を噛む人が誰かといっしょにいると、十中八九、「あっ噛むんだ」とか「噛んじゃうんですね」とか言われているからなんかかわいそうだなと思う。ほうっておいてあげればいいのに。SDGsがこれだけ叫ばれているのだから、今後は少しずつ気遣われて、言及されずに過ごすこともできると思う。ひそかに応援しているのでがんばってほしい。


ここまで書いて思うところがあり、飴を噛むタイプの知人に読んでもらったら「うーんそうじゃないね。本質じゃないね」と言われた。出、出~~~~~~頻繁本質指摘奴~~~~~~~


「私たちは……飴を噛むんだねと言われるのがうれしくて噛んでいる……しかしその気持ちに自分でもわりと無自覚だったりする……つまり……じつは飴を噛むんだねと言われたい……そうやって誰かにつっこまれるために噛んでるフシすらある……けど自覚と責任を伴う行動として噛んでるわけじゃない……無意識……! いつもじゃない……たまにだ……たまにだけど欲している……欲してある……欲する存在として在る……! 私たちは飴を噛む存在であることを誰かにツッコまれたいという欲望を発出する存在である……! そういう淡くて原始的な欲望……飴を噛み……ツッコまれ……一連のささやかな、しかし質量のある欲求……! 自分でこれに気づくか気づかないか……気づけない……たぶん気づけない……私はあるとき気づいたが……たいていの人は気づけない……もうちょっとのところまでたどり着いているんだけど気づけない……! ぎりぎり……それはほんとうにぎりぎり……水面にあとちょっとで鼻先を出すイルカの陰影……それくらいぎりぎり……それくらい自意識……それくらいの露出欲……! だから誰からも飴を噛むんだねと言われなくなったら……そのときイルカは……勢いよく海面にジャンプして……! うう……! 噛んでるよほら噛んでるよ噛んでる見て見て噛んでるから……と!!! アピールする!!!!」

だそうです。イルカっていうよりハンマーヘッドシャークみたいな人です。