目が覚めてすぐに気づいた。米がない。3合炊いて、丸形の小さいタッパーに小分けに冷凍しておいたストックは昨日の夜に切れた。そこから今朝に向けて米を炊くはずだった。起きてすぐに米をかき混ぜ、朝飯のぶんだけ避けてほかを冷凍すれば、少なめ・6食分の冷凍ライスが手に入る、はずだった。それがぜんぶふっとんだ。朝飯をどうするか。今から炊くか。時間はまあある。しかし、早炊きはいやだなと思った。固くなる。愛のない米だなと感じる。早炊きはいやだ。じっくり給水してから予約で炊くことにした。炊飯器の予約ボタン、いつも1回だけ押して、5時40分に炊きあがるようにしているが、今が5時40分だ。だからもう一度押す。すぐに21:00の表示が出る。前にも、このミスをしたことがあるのだなと思った。そのまま今晩の9時に炊けるようにセット。
昨晩、晩飯のあと、洗って拭いて、キッチンの上に広げて乾かしてあった食器を片付ける。いつもなら、食器は寝る前に片付けており、朝には朝食に使う食器以外はここには出していないはずだ。でも今朝はそれもできていない。本当にいろいろできていないなと思った。
理由は明らかだ。昨晩、ビールを飲みながら、宇宙兄弟をラストまで読んだからだ。その衝撃を受け止めることに体力を使い切り、やるべきことをいろいろ忘れた。でも、むしろちゃんと歯を磨いて寝たことをほめてもいい。「べき」なんて、たまにはすっぽかしてもいいのだ。息子にもそう伝えてきた。ただ、「べき」を失った私は私ではないようにも感じる。
朝飯がない。冷蔵庫の中を覗いていて、気づいた。今日・明日とここで飯を食うと明後日からは出張が連続。するとここにある3つのヨーグルトの期限が一斉に切れる。ならば今、朝飯代わりに、いつもは1つ食っているヨーグルトを2つ食えばよいのではないか。それで朝飯になる。さっそくヨーグルトを2つ出してきて、白桃のほうから食べる。ひとつ食べ終わり、スプーンを洗わずに、もうひとつのヨーグルトのほうにスプーンを入れるとき、とんでもない悪行をしているような気持ちになった。まあいいのだ。悪でよいのだ。さてもうひとつ食べる。ああっ、こちらも白桃だ。白桃かぶりしてしまった。メーカーが違うのだけれど味がいっしょ。いや、食べると微妙に違う、中に入っている具のサイズが違う、けれどもどちらも白桃だ。地球外生命体が私たちの生活をランダムにサンプリングしているとして、今の私の朝食シーンを4秒程度の動画でピックアップすると、「地球の日本の北海道の旭川に住む医師・博士・死体解剖資格保持者・国立大学准教授は日の出の直後に白濁したゲル状の物質を2セット摂取する」という情報が地球外生命体居住惑星外クラウドサーバに保存される。そこから学者はどういう意味を読み取るのだろう。地球外生命体が次の侵略先を私たちの星に定めたとき、先住民族から白桃のヨーグルトを奪うことで戦力を削ぐことができると考えて、明治や北海道乳業や森永やオハヨー乳業を優先的に爆撃する、といったことがおそらく起こる。その奇妙な非効率によって我が星の人びとの行動に余裕が生まれて結果として侵略の危機を脱することができる。It's a piece of cake. ヨーグルトって英語でどう書くんだ?