「めんどくさい仕事を私が代わりにやる」に嘘はない。しかし、実際には「私の代わりにやってもらいたいこともある」ので、ちゃんと話すとだんだんうさんくさくなってくる。いや、まあ、就職というのはそういうものだ。お互いがお互いの得意なもので勝負できれば、それでみんながほどよく貢献できれば、それが一番いいことだろう。ただ、これもひとつの綺麗事である。あまねく人類が共通して得意なこと(例:ストレスなくチヤホヤされること)がある一方で、ほぼすべての生命体が苦手なこと(例:確定申告)もある以上、分担というのはニコニコだけで乗り切ることはできない。お互いにうまく融通し合う、なんていうのはひとつの幻想だ。誰もがやりたがらない仕事が全員から等間隔の場所に積み上がっているシーンは、どんな職場にも必ず存在する。スクラムを組んだって足元にスペースは生まれる。どうしたって、誰かが、えいやっとしんどい思いをしてその隙間を埋めに行かなければいけない。
そういうめんどくさい仕事の多くは、私がいれば、私が担当する。でも、私が毎日いるわけではないし、私だけではさばききれない仕事を手伝ってもらうことも出てくる。
こういうことを粉飾なしに語ると、仕事を探している人間は、たいてい引く。でも、普遍的なことである。
「なぜ俺がこんなことをしなければならないのか系の雑務」というのが世の中にはたくさんある。うちの職場の場合、そういうのは私がやるし、私はわりとそういうのが得意だ。そして、私と一緒に働いている人間は、ああなるほど、そうやってうまく感情を使わずにやっていけばいいのだな、と、学ぶこともあるだろう。あると思う。わからない。ぜんぜん通じていないかもしれない。すべての人がそういう雑務のこなし方を学ばなくてもいいだろう。それは得意な人がやればいい。
問題は、「自分でやらないと成長できないと言われてしまうタイプの事務」のほうだ。ここではドラクエが比喩になる。仕事を「敵」ととらえた場合、倒したときに得られるものはゴールドとEXだ。このEX集めのほうがメインになるシーンは必ずある。ダーマくらいでいったんレベル上げしないとだめだな、ってなってメタルスライムを狩りに行った記憶を思い出せばいい。そういう敵……仕事を私が代わりにやってしまうというのは正直よくないと思う。ただ、これを、「ゴールドの効率が悪いからやりたくない」というタイプの冒険者がけっこう多いなという印象がある。
医者の場合、専門医をとればそういう「素材集め」とか「収集タスク」からは卒業できると思っている人間が一定数いる。それが間違いだとは言わないがちょっと見通しが甘いと思う。レベル20になれば一人前、うん、それはダーマで転職できるという意味ではそうだけれど、えっ、まだカギもぜんぜん集まってないしオーブだってこれからなのに、いいの? いいという人は確かにいる。でもそれってドラクエIIIやってる楽しさの10%にも届いていないと思うんだけどな。
ところで最初に書いた「うちにくれば楽しいことができる」というのも、保証というわけではなく希望でしかないし、ほかでもない私が楽しいと思っているだけで他人からみたらそうでもないということも十分にあり得るので、じつはここも、若干誇大なコピーである。合う・合わない問題。響く・響かない問題。進路を決めるというのはどのみちそういう話だ。事前の触れ込み通りに快適な生活を100%送れる勤め先、なんてものは世の中には存在しない。たくさんの不確定要素があって、それらのどれかは人によっては許容可能で、またどれかは人によっては絶対に共存できないNG項目であったりする。ああ、人集めか、難しいな。春からは当科の専攻医が3名になる、これはほんとうにありがたいことで、全国の病理部からすると「そんなにいるのかよ」と驚かれるレベルだ。「人集めが難しい」なんてよく言えたものだなとおしかりを受けるレベルだ。でも私はもっとたくさんのことをやりたくてここに来たのだ。札幌厚生病院でできることは一通りやってきた。それをまっすぐ延長、するだけではなく、横方向に伸ばしたり接ぎ木したりして、立体的にぼこぼこ広げていきたい、そのためには、私と似たようなことを考えてくれる人を、あと2800名くらい雇えたらベターだなと考えている。