腰痛がえぐくてヨチヨチ歩いている。ヨチヨチ歩いている自分が愛おしい。赤ちゃんがヨチヨチ歩くのは、体幹の筋肉が育ってないからなんだなということが今更わかる。解剖学は日常をよりカラフルに彩ってくれるすてきな雑学になりうる。本当は実学なのだけれど雑に扱っても味がする。
科研費をみんなでとろうねという話をした。みんな肩を落とす話題だ。でもまあ、そういうこともしていこうと思う。せっかく大学にきたのだから。この「せっかく」が私をせっかちにする。
夏にビアガーデンに行くのは義務ではないが、「せっかくだし」という感覚にはそこそこの強制性がある。より込み入ったことをいうと、「せっかくだし」という言葉はそんなに暴力的ではないんだけど、「せっかくの機会なのに……」の攻撃性はけっこう高い。否定的に用いた瞬間に威力が出る言葉というのがある。
小牧の空港をうまく使えると気持ちがよい。ホテルの朝食会場が開くより先に出てタクシーに乗る。斜めに差し込む陽光が顔を焼く。もう蝉の声がする。信号で、少女が、赤信号を待つ少女が、交差点に背中を向けていた、たぶんまぶしいからだろう。日傘も差さず、しかし彼女の短い髪はからすの色で、輪郭はGペンの筆圧であった、ナンバーガールの歌詞のようにこれから帰るのかもしれないし、単に朝番のバイトに向かう早起きな学生なのかもしれないが、彼女は一心にスマホに何かを叩き込んでいた、腰痛がえぐくてヨチヨチ泣きながら、私は知らない少女の1日の平穏を願った。そういうのもぜんぶハラスメントですと昨日の懇親会で名前を覚えられなかった教授は笑った。