ぐうの音も出ない話を略して寓話

メタボが戦車でやってきた! BMIが標準をコンマ2ほど上回り、前日9時から絶食していたのに中性脂肪は高く、LDLもあいかわらず異常下限(これはずっと)、そして今回はじめてHbA1cとγ-GTP、そしてまさかのALTがひっかかったのである。これは医者のコメントがついていなくてもわかる。酒だ! 私は酒によって体を壊しているのである! 念のため医者のコメントを読んだが(弱気)、同じことを書いていた。というか私も医者なのだ。よく考えれば。よく考えなくても。

おもいあたるふしがたくさんある。休肝日ゼロ。ビールの本数は350 mL缶で平均3.5本/日程度だが毎日というのがよくない。睡眠2時間前の飲食ほぼ毎日(というか食べて気絶して朝になる感じ)。そして、なにより、前回の検診から今回までの1年で、私はとても、ものすごく、仕事がたくさんできるようになった。成長した。なぜこんなにたくさん仕事ができるのだろうと内心不思議に思っていたのだがその答えが今日出たのである。答え:体を酷使していたから。大量の酒と乱れた生活によって仕事する時間を膨大に確保していたのだから仕事が進めば進むほど血管も肝臓も壊れるという寸法であった。まあそうだろうな。そうだったんだな。いちいち納得しかない。

受診勧奨されている。とうぜん、医者にかかるだろう。すると言われるのだ。あっ先生ですか。いやいやどーも。いつもお世話になっております。こないだの症例もありがとうございました。えーそれで……いやこれはもう先生にご説明するようなことじゃないですよね……おわかりですよね……じゃあそういうことで。なんか別にお薬いります? いらない? じゃ、おだいじにどーぞ。こうだ。間違いなくこう。かかった意味がない。自分で考えろということである。しょうがない。自分で考える。私は医師であり患者でもある。ならば、非医師が病院に行くよりもはるかに私にマッチしたベストな選択肢を考えて提案できるはずだろう。それはこうだ。


規則正しい生活、適度な運動、お酒は基本飲まない(たまにうっかり飲む程度にする)、睡眠2時間前にごはんを食べない。


このような極めて適切なアドバイスを生活の中で実践していくには、じつは医療従事者が言わない秘密の行動変化が必要である。私は医者であると同時に患者だからそこまでコメントができるのだ。すごいだろう。これらを達成するのにさらに必要な行動はなにかというと……。


仕事量を減らして日常の規則性を取り戻す。休日を確保して運動できる日を作る。精神の負荷を減らしてお酒に頼らなくても寝られるようにする。早く家に帰って早くごはんを食べることで睡眠前に胃を動かさないようにする。


こうだ。つまり、医のアドバイスの前段階で、生活、ライフを制御する必要があるのである。ッカァー俺すげぇー名医じゃーん。これを全部守るように。わかりましたか? はい、わかりました。そうして患者は二度と外来にはやってこなかった。次の検診も受けないことにした。Happy end...