「社会に出たらそれじゃ通用しないよ」みたいなことを大人はすぐに言うけれど、実際には社会というのはかなりの量のだめ人間によって構成されていて、学生気分でもわりとあちこちで通用する、というか学生気分と大差ない大人がたくさんいる。遅刻ばっかりすると信用されないよ、いい仕事が回ってこないよ、というのもウソ。納期を守らないと切られる、とか、礼儀を欠くと関係性も欠ける、みたいな話も、部分的にはそうなのかもしれないけれど世のすべてがそうなわけではないのでやっぱりウソ。朝三暮四は世の常。恒常的平衡よりも非平衡定常状態が生命の掟。メールでまともに敬語が使えない大人も礼の心は持っている。後輩にハラスメント的物言いしかできない大人も労りの心は持っている。学歴も年収も地位も名誉も一切関係なく、世の中はどこか抜けていてどこか破綻した人間で満ち溢れていて、だから、つまり、だめで無能な人間が自分の仕事に関わったからといって、そんなに、いちいち気に病むことはない。
ただし、そういう無礼で無能な人間から選ばれて仕事をしている自分のことは、ちょっとだけ嫌いになったりもする。
完璧主義者を名乗る人間ほど幼若なものだ。体験的にそういうのが身にしみる。だからだろうか、かえって、不完全であることを過剰に庇護しようとしてしまっていることは否めない。寛容であろうとするばかりにセキュリティがザルになるということはあるだろう。慈悲をもって眺めていたら小悪党がはびこるということもあるだろう。なにごとも過ぎたるは及ばざるがごとし。きっと私は、完璧に周りを御するべく動く自分が嫌いすぎて、逆に周りがなにをしても無関心な方向にちょっと舵を切りすぎた。もうすこし、粛々と、しめてかかってもいいのかもしれないな、と思う。でもまあもうめんどくせえんだよな。人は人、我は我、それでも仲良し。