前の職場のとある内科医が餞別にとLIFEBOOK UH keyboardをくれた。びっくりした。私がHHKBを持て余しているのを見ていたという。あのキーボードは高かったのだがキーの配置が極めてMac的で、長年Windowsを使ってきた私にとってはなかなかしっくりこなかった。半角と全角の切り替えやかな入力にヒイヒイ言いながら原稿を書いていた私を苦笑しながら眺めている人は幾人かいたが、まさか退職のおみやげとばかりにキーボードをくれるなんて。「中古だから気にしないでください」とのことで「とはいえお高いんでしょう?」と思って検索をかけてみると実際たいした値段ではないのだ。それがかえってありがたかった。私の後任の病理医は私よりも専門性が高く、かの内科医にとってみれば私よりもよっぽど頼りになる新任がやってきたということで、もはや私にかかずらっている場合ではないと思うのだが、心遣いがうれしい。
というわけで新しいキーボードを接続し、前の職場で使っていたデュアルモニタを復活させてこれを書く。快適。順調。すいすいだ。ここしばらく使っていたノートPCのキーボードよりも「小さい」ことがちょっと気になるけれど、順応は早そうだ。よかった。ありがたい。
今度の職場は今までの職場よりも1時間45分早く職員玄関がオープンする。IDカードがあればなんとでもなるのだが、そういう一手間をかけなくともすいすい入れる時間がこれまでより長くなるというのはとてもありがたい。初日の出勤、うきうきしすぎて、予定よりも2時間早く到着してしまった。まだIDカードをもらっていない。駐車場のパスカードもまだだ。おまけに現時点でルーティンのローテーションにまだ組み込まれていないからこんなに早くやってきてもあまりすることはない。事務的な書類をいくつか書く。
……いくつか? いくつかかな? 少しぞっとして確認する。それなりにある。それなりだ。引っ越しよりはるかに簡単だ。こういう事務仕事はひるんでいる暇に少しでも進めていく、とまどっていても手足だけは動かす、それがなんらかのコツなのかなという気はする。このコツがあったからといって魚がうまく焼けるわけでもないし足が長くなるわけでもない。放射線業務従事者の申請を出してください。えっ、これまで22年間使ったことがないけどこの申請ほんとうに必要なの? とかいろいろ考えずにとにかく言われた通りに書く。考えてはいけない。反応するのだ。それがAI時代の正しい人間の生き残り方である。LLM時代だってことは十分にわかった上でこの文章を書いています(人力で)。