これを書いている日は全国的に風神様のごきげんがよろしくない。飛行機が欠航しまくっている。札幌発着のJRも運休だらけだ。稚内、釧路、函館、いずれの方向にも行けないようである。ぼくが移動する予定があるわけではないので、ちょっとだけ他人事なのだが、他人の視野を想像してかわりに心を痛めるくらいの共感力はさすがにこのところ少しは身についており、かわいそうだなあ、大変だなあと言いながら各社のホームページをだらだら更新して状況をチェックしている。遊んでいるわけではない。
ANAの欠航判断はわりと早いようだ。それにくらべるとJALは遅い。今日もそうだが経験的にもだいたいそうだ。家を出るときに欠航がわからないと不便なのだがJALはぎりぎりまで判断しないから、空港に向かう途中でスマホに連絡がきて「ああ、だったら最初から駅に向かっておけばよかった……」みたいにがっかりすることはよくある。とはいえJALの判断の遅さはあるいは新千歳・丘珠ローカル、あるいは本日限定の話かもしれないから、あまり総論的に語るのはよくないかもしれない。ほかの地域では大丈夫なんですか? よかったですね。
JRの運休判断はここんとこずっと早い。ちょっと風が吹くと止まる。潔いくらいに止まるので逆に想像がしやすいし計画も見直しやすい。ただ、こと、JR北海道に関しては、ホームページの更新が壊滅的に遅い。Twitter(現X)ですらろくな運用をできていない。テレビの地方局情報番組を見たほうが情報が早い(だから朝はテレビ必須である。家にテレビがなくて平気な人はJRをあまり使っていないのだろう)。JRはいつまでウェブに対してこの程度の取り組み方でやっていくつもりなのだろう。いつまでこんな見づらいUIを使い続けるのだろう。前から思っていたことだが、JR系列のウェブやアプリは企業の規模にくらべてかなり進歩が遅いように思う。アクセスする人数が膨大だからしかたのないことなのかもしれない。サーバーの維持だけでしんどいだろうしな。それにつけてもNintendoはえらい。7年前に出たSwitchのUI、今もなおキレッキレだ。老若男女への優しさだけで考えればAppleのUIより上だと思う。立派だ。というか、Nintendoがここまですごくなかったら、JRもまあそんなもんだよなと思ってあきらめていたかもしれない。NintendoがすごすぎるのでJRの稚拙さが目立ってしまう。JRかわいそうに。
そして刃物の先が自分に突き返される。医療系こそひどい、という話。でも人から言われるまでもなく内部のぼくらも思っている。電子カルテ、なぜこんなにもっさりしているのか本当に謎である。デザインもしょぼい。「うちは最新の電子カルテを入れたので、厚生病院さんのような古いシステムよりだいぶきれいですよ!」みたいな新築クリニックの電子カルテを見たことがあるが、なんか、RPGツクールで子供が作ったゲームみたいな見た目だった。これで最新なのか、と思う。ださい。まあそれよりうちの病院のカルテシステムのほうがさらにださいのだが。ださいのはまあいい。なにより機能がしょぼい。きちんと競争が起きていないのだろうな、と思わせる。選択圧によって不便な部分が削り取られるような闘いを経ていないのだろう。検査オーダー、結果の閲覧、病歴のまとめ、外注の処理など、いずれもWindows 95時代の使い勝手から特に進歩していない。人の命がかかっている場面でユーザーがいろいろ気をつけることが多すぎなのである。
ただし、電子カルテの進歩が遅いという理由で患者にかかる不利益よりも、「そもそも医療というサービス自体が多くの人にとって不快である」という点のほうがでかいよな、と思うことはままある。
「なぜこんなに待たせるんだ! 患者呼び出しシステムでもなんでもつけて快適にすればいいだろう!」というご意見をネットでもたまに目にするが、まったくそのとおりだよな、と思う。しかし人気の回転寿司屋で呼び出しシステム完備をしてても人気がありすぎると結局待合室に人があふれる。だったら病院だってどうせどんなシステム用意したってああなるんだよな、というあきらめもあるのだ。もちろん、「医療ってのは本質的に不快なんだからあきらめなさいよ」という一言で患者も職員をも説得できるとはぼくも思っていない。けれど、うん、これくらいの不便は未来永劫どこかに残っているんだろうな、みたいな俯瞰したあきらめみたいなものを持ち合わせている。
天気。交通。医療。税金。どうにもならない、不快と不満がまとわりついているものたち。そういうものにひとつひとつ、「なぜもっと良くならないんだ」という怒りを向けていくことで、実際にこれらをめぐる環境は少しずつ良くなってきているが、それらが良くなりきるということはないのだろう。「ままならんよねえ」「ままならんなあ」と言って眉をひそめながら、ほかのことで自分の機嫌をとる。ほかのことでカラッと笑う。ほかのことで気を紛らわせる。そうやってぬるぬるすり抜けていくほかないのだと思う。「この位置のトゲゾーがいつも不快なんですよ」と言いながら高速でマリオをぶっ飛ばしていくRTA走者がかっこいいと思う。障害がすべて消えることはなく、障害を克服し続けることは義務であり、障害を把握しながらそれ以外のところで少し笑うことが可能だ。そういう仕草に落ち着くことになる。それくらいの態度がほどよいのだと思う。