しっとりしたリズムとしっくりしたリズム

夜9時前には横になってうとうととしはじめていた。日中の疲れが熱帯夜で増幅されることでバイオリズムが波動関数から一次関数(※傾きは負)になっている。宿屋に180G払ってHPが半分になるような感じ。まあそんなものだろうつまり夏なのだ。酒量も減らして睡眠時間を増やす。趣味は仕事と寝ることです。こんなことを馬鹿正直に口にすると人生損してるねと言われる。人生を損得勘定ではかる時点で人生大損だろうと言いたいががまんする。室内の湿気が高まっていく。除湿オン。たまに思うこと:リモコンはリモートコントローラー、エアコンはエアーコンディショナーなわけだが、べつにエアーコントローラーでもよくない? だめ? 英語のニュアンス? そういうのは英語ネイティブの国でやればよくない?


ここ数年、通勤や退勤の車の中ではポッドキャストを聴いている。最近買い替えた車でようやくBluetoothでスマホ接続できるようになり(今まではできなかった)、エンジンをかけるとスマホが自動で接続されてSpotifyで「昨日の続き」が勝手に流れるようになった。便利だ。しかし落とし穴もある。思ったよりこの車、外に音が漏れるのだ。そのことに気づいたのはつい先日のこと。早朝、缶ゴミを捨ててから出勤しようと思って、路肩に車を留めてエンジンをかけたままゴミステーション(※北海道弁)にゴミ袋を置き、車に戻ってきたらなんかばっちり中の音が聞こえるのだ。うわっ……と思った。『熱量と文字数 600回記念』の企画はなぜか「腐女子最高会議」で、総受けの定義がどうとか言っているくだりが公共の場に流暢に流れている。こ、こ、これはなかなか……と思わずその場で立ち尽くした。車が走行している間はまだいいだろうが、横断歩道の手前で停止しているときなど、歩いている人の耳に普通に「国井さんの真のお仕事」とか「ひがもえるさんが仮縫いの糸がほどけるくだりを完全に予想してホールインワン」とか「「響け!ユーフォニアムのれいなの◯◯の色は空色」のような会話がバリバリ聞こえていたということになる。頭を抱えざるを得ない。ほかに車で良く聞くのはJ-waveの「Before dawn(燃え殻さんのFMラジオ番組)」や「感情言語化研究所(畑亜貴さんとサンキュータツオさんの15分くらいのポッドキャスト)」や「聖なる欲望ラジオ(豊島ミホのポッドキャスト)」や「おたがいさまっす(松岡茉優・伊藤沙莉)」なのだが、中でももっとも濃厚かつ一人で聴く以外の選択肢がない番組・熱文字を、閑静な住宅地を通過中に視聴している自分の生活リズム。いまさら車の防音不備などによって崩したくはない。今言うことではないけれど「さん付け」の基準が自分でもよくわからない。会ったことがあるかどうか? いや必ずしもそういうわけでもない。しっくりくるかどうか? しっくりって曖昧な概念だなあ。



「一番搾り糖質ゼロ」という青い色の缶ビールがある。このCMには中条あやみとトヨエツが出てくる。トヨエツが「ビールくらい糖質ゼロじゃないやつがいいなあ」的なことを言うと、中条あやみが「遅れてる 糖質がおいしいなんてのは考え方が古い」と苦言を呈して、トヨエツがちょっと渋い顔をしつつもビールを飲んでおいしいと言う、みたいなパターンがいくつも展開される。あのCMが少し苦手で、理由はおそらく「おじさんならば攻撃してもよいという風潮」をぎりぎりかすっているほんのりハラスメント風味がしんどいからだと思う。しかしタイムラインで例のCMが攻撃されているところを見たことがない。世間的にもあれはOKの範疇のようである。つまり、私の感覚がずれているということになる。たぶん世の中にはこれまで、トヨエツみたいな人にハラスメントを受ける立場の人が多くいて、トヨエツ的なものが声高に抑圧してきた人びとが今ようやく復権してきているという流れだ。中条あやみが代演する「世の怒りの意趣返し」が、さほど暴力的でもなくちょいシニカルにトヨエツをやりこめてスッキリするという流れに身を任せれば、あのCMはビールと同じようにスッキリ楽しめるのだろう。



ずれと鬱滞に対処する夏の日々。それってつまりは差異と反復ってことか。タイムラインを眺めると糸井さんが俳句を詠んでいる。ずれと鬱滞を俯瞰するのに俳句というのは効果的なツールなんだろうな。