月島で歯の治療したら歯科医もんじゃだよね

歯茎は健康のバロメーターだなあ。猛烈に忙しくてストレスがかかると歯茎が腫れてくる。みたいな文章を考えていたところでバロメーターのバロってなんなのかが気になった。工藤新一だろうか。ググるとすぐ答えがでてくる。気圧の単位がヘクトパスカルになる前、「ミリバール」という言葉があったがあの「バール」から転じたものが「baro」なのだそうだ。バロメーターってのはつまり気圧計のことなのだ。「ヒザが痛むと雨がくるんだよ」みたいなことを楽しそうに言う中年がたまにいるので、今度そういう人に会ったら、「ヒザは気圧のバロメーターってことですね」っていうボケをぶつけて、「馬から落馬したみたいなこというやん」ってつっこまれなかったらぼくの勝ちゲームをやってみよう。たぶん勝てるだろう。

最近の我々はインターネットという外付けのハードディスクを使って脳の機能を拡張するのがあたりまえになった。さらに、急速にAIが身近になったことでいわば外付けのCPUも使えるようになった。型落ちのスマホ程度のスペックしか持たない脳であってもWi-Fiさえつながればなんとかなる。iPhone 5sでずっとがんばっている酔狂みたいな生き方。少し前までは、本体のメモリがしょぼいといくら外付けで機能強化しても使いこなせなかったのだが、どうもここんところのIoTの整いっぷりはメモリもグラボも何もかも外挿できてしまう印象で、本体のスペックなんてどんどんどうでもよくなっていく。

私の脳がアイデンティファイされる要件がよくわからない。誰もが疑問をググって解決し、コミュニケーションをAIにまかせるようになり、お互いが個である意味が消えて大きなひとつの物語になる。それは、環太平洋に点在する国々を調べてみるとだいたいどこの地域にも似たようなモチーフの神がいて供物があって互酬があって近親相姦への暗い反発があるという話、登場する生き物や造形が少しずつ変形し続けているけれどじつはひとつの大きな神話体系を見出すことができるみたいな話に、似ているように思う。

時の摩耗によって収斂するように私たちは互いに似通っていく。それはおそらく、私たちが時とともに拡散して離れ離れになることに対する根源的な恐怖があるからで、孤高よりも衆愚を愛する本能があるからではないか。私たちは知らずしらずのうちに、私が私である意味よりも、私たちが私たちである意味のほうに少しだけ多めの愛着を注ぐタイプの人類になっていて、それは哲学や人類学の歴史をかえりみるとおもいのほか新しい現象なのではないかという気もしないでもない。私たちは今、自分自身がたったひとりでどう生きて死ぬべきかを考えられるほど自前の独立した脳に依拠していない。私たちは知らないうちに「みんなで神話になる方向」に向かっていて、それはおそらく私たち世代がもはや苦笑とともに語らざるを得ない人類補完計画と大差ないものである。いいか、そうやってすぐググるのをやめろ。ゼーレのシナリオどおりになるぞ。