エクスキューズが多いなあ。文章が長くなる。「これ全部言い訳ー」。岸京一郎が私の文章をざくざく刈り込んでいく。診断はまだいい。メールがやばい。長い。もっと簡潔に。多弁すぎる。もっと核をつかんで。そうやってできたらいいのだが。どうもテクスチャの、きめの、けばだちの、あわあわの、ざらりぬるぬる、そういった部分をそのときの温度と質感のまま残したいという気持ちが日に日に強くなっていって、メールが長くなる。
会話もやばい。日常会話はまだいい。講演がひどい。長い。時間オーバー。いろんな人に怒られる。人様のだいじな時間を頂戴してお話しさせていただくのだから、なにはなくても時間だけは絶対に守りなさい。そうやってできたらいいのだが。どうも熱意の、熱源の、火種の、火花の、火打ち石の、火打ち石を握りしめたときのひんやりとした感覚を手のぬくもりでいったん温めてから石を打ち合わせたほうが火が早く点くんじゃないかと思ったあの夕暮れの感情の、時間とともに冷えていく過程の微分の解をしゃべりたいという気持ちが日に日に強くなって、講演が長くなる。
私はどんどん不完全な方向に進んでいるのだなと思う。若い頃は、経験を積むたびになんとなくだが「完成に向かっていくのだろう」という漠然とした予感と、「完成に向かっていけたらいいな」という傲慢な夢があった。今はもうそれはまるで違うマジでマジで違う。歳を重ねるたびに私というスープに雑味が加わる。隠し味が多すぎて出汁の良さが消える。
システム屋が冗長性という言葉をポジティブな意味で使うと安心する。よかったァ、私も冗長だからいざというときの耐性が高いぞ! ご冗長でしょう、ファインマンさん。ファインマンって主人公みたいな名前だよな。ああちがった名字か。
改行を多くして
表現をとぎすませ
静寂の中にしずかにほうりこむ
3.14159265358979323846264338327950288419716939937520
今おぼえているかぎりの
円周率を
てきとうに書いてみたら
なんの仕込みもなく
さいごから2番目が
まちがっていて
小学校6年生のときに覚えた
この無意味な記憶もついに
46歳にして滅び始めているなとわかって
マジこの展開は予想してなかった
えっちょっとショック
こんな昔の芸能人のPHS閲覧用ホームページみたいな文章を書き散らしたほうがPVが増えるってんだから世の中のほうがよっぽどゴミの堆積場だよな。急に思い出したけど、クララとおひさま、あれ、いい小説だったな。