若手がばんばん酔っ払って組んず解れつしているのでびっくりしてしまった。彼、既婚なんですよ、へえ、それは立派だねえ、でもそれ隣の先生との距離大丈夫なんですか、はい、今だけですから、そういうことじゃないよね、みたいな会話をいくつかした。感心すらしてしまう。まったく最近の若い者はしっかり若い者だな! 帰りのタクシーに偉い人といっしょに乗って、先にその人の家の方向に向かう、私の歓迎会とのことでたくさんお金を出してもらってしまった、帰りのタクシー代くらい私が多めに出すべきだろう。偉い人を降ろしてさあタクシー出発と思ったら降りたところの雪山に突っ込んで盛大に転んでいるのでびっくりして、タクシーに一端待ってもらって駆け寄って起き上がらせて、雪をほろって、タクシーに戻って「ああびっくりしました」と言ったがタクシーの運転手は無言であった。同じ酔っ払いだから相手にしたくないのだろうなと思った。粉雪が待っている。東京あたりの粉雪は舞うのか? そんなものは粉雪ではない。クリスマスケーキのデコレーションに使う目の細かい砂糖。浮かれて舞い踊る。ふらふらと多動で多感。そんなものは粉雪ではない。本場の粉雪は待つ。気温がマイナス二桁になろうとする夜が更けていくのを、粉雪が待っている。私はなんだか疲れてしまった。まだ木曜日なのだ。ここからさらに……18年くらい経たないと週末は来ない。月・火・水・木・金・風・雪・月・花・地……土曜日は遠く霞の向こうで舞っている。決して待っていてはくれない。
歓迎会がすべて終わるのに二ヶ月半かかった。
ギスギスの実のギス人間たちとたくさん挨拶をした。一人ひとりはみなとてもいい人なのだ。ただそれがお互いの話となると途端に悪口の言い合いになったり足の引っ張り合いになったりする。陰口というのは陰で言うものだと思っていたが近頃はなるべく陽のあたるところで言う風習に変化したようである。翳口の奥の奥までじっくり時間をかけて聞いてみるとそれらにもいちいち歴史と経験と理屈があって、その筋道がわからなくもないので、余計にむずかしい話だ。一方的に誰が合っているとか間違っているということもまったくない。世界中の言語がひとつにならない理由は、お互いの言葉が通じすぎるとギス人間たちが能力を使ってひと繋ぎの大秘宝(ワンピース)を目指してしまうからではないかと思う。ひと繋ぎになんてしてもだめなんだよな。だって、それは、陸を全部海の下に沈めれば、海面下でみんな地続きだよね、なんて言うようなことなのだから。
私は海面を上昇させようとしているのか、それとも、干上がらせようとしているのか、とにかくみんなで仲良く楽しくやっていこうねという、強烈な毒をふりまいて、しぶきが舞って、ああ、偽物の粉雪のようだ。