尻に手を当てる

雪原の向こうに遠く眺める大雪山は奥にゆくほど青白く。冠雪どころか鎧雪のようにまとわりついて、山の木々は相対的に鈍色化して、目から飛ばした指でなでるとイザイザとざらついて私は髭をもう少しあたってくればよかったなと顎をなでた。

Zoom会議で顔に手を当てる人間は素人だ、みたいな話を、かつて、聞いた。ほぼすべての参加者が、カメラオンの会議で自分の顔しか見ていなくて、手を顔に持って行くなんて不潔で下品でとんでもない、みたいな感じで、肌を白飛びさせシミを消去するアプリの設定をいじるのに忙しく、だから私は近頃は自分の顔を最後まで見ないチャレンジをしているのだけれど、そうするとやっぱり、気づくと私だけが顎に手を当ててなにやら考え込んでいるふりをしている。それがいやでも目に入る。素人なのだろうな。

痔の悪化が止まらない。顎に手を当てるよりも肛門を手当てしたほうがよほど私は落ち着くだろう。しかし現代社会は人前で肛門をなでなですることを許されるようなシステムにはなっていない。システム・エラーだ。次のアップ・デートでKAIZENが要求されるがバージョン・アップのお知・らせはまだ当分やってこない。むかしこうやってなんでもナカグロを使ってアピールするオタクがいたけれど、彼は、元気だろうか、Twitterの初期に私はたしかブロックされてしまったのだけれど。

DAZNでプロ野球を見るためにDocomoのギガ放題サービスを契約したがやっていることはテザリングでPCを開いてブログを書くことばかりだ。近い将来、テラ放題サービスというのも登場するのだろう、軽薄なことを書いてしまって少し落ち込む。

ああ、眠気が増す、電車の揺れと木漏れ日の逆フラッシュが、サン・シェードの向こうからPCの上で戸惑う指をパカパカ照らしていてなんだか目がつらくなってきた。指で目頭を揉もうとしたら思い切りメガネに指紋を付けてしまって、何年伊達メガネをかけても私はやはりメガネ素人なのだなあとさらに落ち込む。電車はするするすべって札幌ににじり寄っていく。虚勢を張れるだろうか。張り子を被れるだろうか。顎と肛門を気にしながら目頭を揉む。目尻も揉んでみたがそちらは別にあまり気持ちよくはなかった。やはり尻を撫でてもろくなことは起こらない。