呂翔が「今、春が来て君は紀霊になった」 みたいなことを言う同人誌もどこかにはあるのだろうと思いながら目が覚めた。寝る直前に袁紹軍のことを考えたからだと思う。朝から耳の中で鳴っているのはクラムボン。これは昨日クラムボンの有名な曲と同名のマンガを読んだからである。昨日か一昨日の目覚め、どっちだったか忘れたが、とにかく朝焼けのきつい5時15分にサカナクションが鳴っていた、それはたぶん寝る前に櫻井翔の顔を見たからで、櫻井翔→夜会→アイデンティティのサビ、という連想が、寝ている間に牛歩の遅さで進行し、目が覚めた瞬間にちょうどイントロが流れ出すくらいの状態になっていたのだろうと思う、ただし脳内オンエアはアイデンティティじゃなくて怪獣だったので途中に若干の混線は生じている。そういったことが自分の脳では頻繁に起こる。そういったことは誰の脳にも起こっている。だろうと思う。ではないかと勘ぐっている。みんなが私と同じかどうかは本当はわからない。それは比べようがない。アフロ脳科学のいうクオリアだかエモリアだかキシリアだかはさておくとしても、私の体感が同じ速度、同じ質感で誰にも生じているかどうかは本当に、比べようがない。BPMが速ければ速いほど音楽として優れているというわけでもないのだろうが、私の思考のBPMはじつはハチャメチャに遅いのではないか(※「ハチャメチャ」に「遅い」を接続した瞬間に一般的な字面からの違和が生じたが、シナプス間の電気信号の総和としての思考を考えると、ハチャメチャであればあるほど遅くなるだろうとは思う)、みたいなことを、現実と夢の境界に倒れ込む夜、スキップ、夢と現実の境界から顔を出す朝、の双方にふと思う。目覚めて、意識が無意識を覆い隠すまでのわずかな時間、天空から無意識に向かってかぶさる帷のすきまから見える中空に、循環しながらくるくると上空に駆け上がっていく雲雀の軌跡、その残像が心の開放6弦を振動させて音圧の強いノイズ。
異動の際に、前の職場のメールアドレスが使えなくなるというので、3か月くらいかけて、それまで仕事でつきあいのあった人たちにメールを送り、これからはこっちのメールに返事をくださいねえ、とやっていたのだけれど、やはり、もれがあって、このたび、「ちっとも返事がこないと思ったら職場が変わってたんだねえ」みたいなメールが来て、ごめんねってなった。でも、昨年12月に私に連絡がつかなかったなら、そこで電話なりなんなりしてくれればいいじゃん、だって日ごろ、私はだいたい15分とか30分とかでメールに返事してるでしょう、それが来ないなんて不思議だとは思わなかったんですか? みたいな不満をちょっとだけ漏らす。いや、ま、みんな、誰とどうやりとりしてるなんて、互いに、べつになんにも気にしてない、ていうか覚えてないよね、メールだって、コミュニケーションを取りたくて送るんじゃなくて、その場のタスクをひとつクリアするという気持ちで送信ボタンを押しているに過ぎなくて、それはマリオがクリアまでの間にファイアバーをいくつジャンプしたかなんていちいち覚えていないよね、ってことだと思うのだ。倒した敵のことだって、長く記憶されるのは、1-1の冒頭のクリボーと、8-4ではじめて遭遇するクッパ、あとはそうだな、1-3くらいで、はじめて足場にしたパタパタくらいのもので、あとはなにを踏んづけたのかなんてぜんぜん記憶していないよね、メールってそういうもんだからさ、みたいな声が、ノイズの中から急に認識できるカクテルパーティ効果的なもので立ち上がってくる。