ピースフルスモールインテスティン

北海道ローカルの朝の情報番組に「イチモニ」というのがあって、これは水曜どうでしょうで有名なHTB、つまりどちらかというと弱小寄りの局が作っている番組である。毎朝出勤の直前に見る。なぜイチモニを選んでいるのか、理由はあまりなくて、慣性というのが一番合っている。お天気を伝える人が何人かいて、時間帯ごとにくるくる入れ替わって、その法則も決まっているのか決まっていないのか知らない、なにせ朝だ、準備もいそがしい、だからそこまで真剣に見ていない、けれどもたまに目にする名字は忘れたが下の名前が「まりも」というお天気キャスターの方が、やたらとキラキラしてかわいらしいので映ると見てしまう。「札幌、おでかけ天気」の声と共に非常口のマークのようなポーズを一瞬とってから天気予報を述べるシーンがあって、そこをとにかく見てしまう。愛らしい。こんな娘がいたらテレビに出したら変な虫が寄ってくるだろうから本当は出したくない。突然の親目線。今の私がまさに虫だ。

まりもさんからスタジオにカメラが戻ると、いつものキャスターとひな壇的出演者約4名が映る。オクラホマの河野以外の名前はよく知らないが全員に共通点があり、それは、「声がいい」ということだ。そうか、イチモニを見ている理由は声かもしれない。洗面台やキッチンから声だけ聞いていることも多い朝の情報番組の心地よさといえば声がキモだろう。声色がまっすぐで倍音の厚みにぶれがなく不協和音もない。

声。声がすごいなと感じることが最近たくさんある。わりと多くの人が指摘しているが吉岡里帆という人は声がめちゃくちゃいい。テレビのCMとかだと、あーかわいいですねで終わってしまうのだが、ラジオで聞くとかなりびっくりする。ほか、ラジオ好きの前で言うと恥ずかしいレベルの有名人だが、この間までスクール・オブ・ロックのMCをやっていた遠山校長の声はカリスマ。すごい。換えが効かない。

声はありふれているのにしゃべりはめっぽううまい人というのも世の中にはたくさんいる。しかし、「しゃべりがうまい」の前段階というか伏線として「声がいい」というファクターを有する人だと、迫力が違う。ボイトレでどうこうできるものではない。たまたまそういう「声がいい」ほうで暮らしている方は、自分の個性をぜひ、大事にしてほしい。

ところで、今書いていて思ったが、「悪い声」というのは思いつかない。「いい声」「かっこいい声」「イケメンな声」はいくらでも思いつく。しかし、「へんな声」「いやな声」「ブサイクな声」というのは、うーん、今、いったん両手をキーボードから話して腕組みをしてかなり真剣に考えてみたけれど、本当に思いつかない。ふしぎだ。「不快な口調」とか「腹のたつ喋り方」はあるのだけれど、「いやな声質」というのは、ないな。黒板をアレする音、みたいに、不快な音というもの自体は存在するのだけれど、人の声帯から出る音が生理的に無理というのは、少なくとも私にはないように思う(生理的に無理な人がしゃべる声がきらい、というのは区別する必要がある)。つまり、これはつまり、少なくとも私にとって、「人の声」には肯定しかなく否定が存在しないということだ。ふーん。声って平和の小腸じゃん。最後、そこで誤字するかなあ……。