はたしてレンチンが終わってもキャベツはでかいままであった。というかキャベツから水分が出たのだろう、全体のボリュームが減っていない。そうか、そうだな、そうだよな、と思いつつ、はしでキャベツを押し付けてもう一度レンチンする。今日の味噌汁は失敗だったかもな、と懸念を表明する。空間に向けて。でも独り言まではしないほうがいい。この部屋は、壁は分厚いのだが、床と天井が薄い。上の階の住人の、歩く音が本当にうるさく聞こえる。それだけならまだしも、昨日は朝に盛大な屁の音が聞こえた。さすがに嘘だろうと思ったがあれは確かに屁だったと思う。となれば独り言くらい簡単に貫通するだろう。この部屋で流したアラニス・モリセットやレイチェル・ヤマガタやLOSTAGEやZAZEN BOYSの狂った振動は全て上の階にも聞こえていたことだろう。キャベツの失敗は口に出してはいけない。きゅうりを切る。一本まるごと切る。切ったら塩を振って、レンジが空くのを待つ。あらゆる料理をレンジでやっている。
下の名前がレンジという人はけっこうたくさんいると思うのだが、レンジの陰茎はレンチンだなと今思う。
コンロにフライパンをかけてあり、スーパーで買った味付きのトンテキをネギといっしょに加熱している。今日もいつもとほとんど変わらない晩飯だ。ただキャベツの量だけが心配ではある。何度かのレンチンの末にとりあえず椀のへりから飛び出さない程度にはキャベツが縮小し、トマトはだいぶ原型から遠ざかってしまったがまだかろうじて色味は残っている。味噌を少なめに溶いて完成。完成というか、慣性かもなと思う。口には出さない。
なんだかビールが必要かなと思った。ふだん平日には飲んでいないのだけれど今日のこれらの料理はビールの勢いで流し込んでもいいのかなと思った。ビールの勢いを用いながら無限になくならないキャベツをばりばり食い、思った以上にいい感じにエキスの出たトマトベースの味噌汁をすすり、塩ふりきゅうりに塩昆布をまぶしたものを食い、トンテキとネギの炒めたものをかじりながらビールを飲む。すぐに気づく。いそがしい。ビールはなくてもよかったかもしれない。いつもの倍くらい時間をかけて晩飯を食い終えた。結局、咀嚼に忙しくてビールはあまり進まなかった。洗い物を終え、ふきんで水気を取った食器をキッチンの端から並べた後、ややぬるくなったビールの残りを飲むのに何がいいかなと考えて、宇宙兄弟の37巻を読み始めた。あとは昨日の日記に続く。