缶ビールよりもジョッキのほうがうまいと言っている人間のことを全く信用しない。
花火が見えないのは、単純にホテルの窓の向きの問題だ。しかし、この地に長年にわたり出張してきた私、このタイミングで花火を見たことは、まだ一度もなく、つまりは窓の向きではなく、私の問題なのかもしれないなと思った。
ほんとうに何もかもすぐに通り過ぎてしまって困る。
基盤Cの申請書。若手病理医が中心となって書いている本の添削。消化器画像診断研究会の病理解説。上海出張。いずれも今年の春には思いもよらなかった仕事。大学での職とは関係なくこれまでのつながりで降って湧いた仕事。だから、大学での職務に抵触するのでなかなか時間内に取りかかれない。休みの日に取り組むしかない。いよいよ疲れてきた。目の周りがまっくろだ。……といったことを書きつけただけの文章にしても、申請書だと細々と直される。そういうことばかりしている。やってられないなと思う。
それでもやるのだ。なぜなら、大学にいるというのは、そういうことだと思うからだ。
心理的安全性の高い職場を維持するために日々尽力。この仕事をしたところで、私の心理は別に安全にはならない。そういう役目なのだろう。めんどくさい。心理的安全性という言葉を便利に使い出した人間たちは、何を見て、何を考えているのか、究極的なところで私はよくわからないし話が合わないと思う。それでも守るのだ。人の世の中で、うっすらとした悪意の前に立ちふさがって、壁を作って、誰かの心を守る。
壁の内側に籠ってみたら、青い光が透見して、自分の手とかまぶたとかを、青く光らせるのだ。ああ、これは、だいぶいいかんじの引きこもりだなと、私は思った。